断面性能の計算式(10)-呼称-

座標法と数式処理ソフト maxima で断面性能の計算式を求めるやり方を紹介します。


座標法でも 形状寸法を変数とすれば 計算式を 求めることができます。多角形に限られますが 積分をする必要はありません。
数式処理ソフトを利用すれば 多角形の頂点の座標を定義するだけで 断面積から主軸の角度まで算定することができます。いまのところ、円弧や放物線は 折れ線に置き換える必要があるのですが、今後の研究によって 合理的な手法が提案されてくると思われます。


多角形の断面性能の計算式は

となります。座標に数値を代入すれば 断面性能が算定できます。

ただし

座標 = [x1, y1], [x2, y2], [x3, y3], …, [xn, yn]

Ax = S,  Ix = Jx,  Iy = Jy, Ixy = Jxy

図心回りの2次モーメント
    Ixc = Ix - Ax * gy ** 2
    Iyc = Iy - Ax * gx ** 2
図心回りの相乗モーメント
    Ixyc = Ixy - Ax * gx * gy
Xc軸からの主軸の角度 α
    α = atan2(2 * Ixyc, Iyc - Ixc) / 2
Σ は i = 1, n-1
座標は閉鎖形の頂点でそれを結ぶ線が交差しないようにする

※参考文献
 ○材料力学本論 / 前澤・吉峯訳 / コロナ社 付録2 平面図形の諸元
 ○建造力学 / 谷口著 / 裳華房 第20章 断面の主軸

 

さて、今回は 呼称について考えてみます。

前回、座標の代わりに木材や鋼材の呼称で断面性能を求めました。呼称は断面寸法を "x" で区切って示す慣習があります。

(1) 木材で 平角(ひらかく) 150x300

    矩形で b=短辺(厚さ)=150mm、h=長辺(幅)=300mm

 

(2) 鋼材で 細幅(ほそはば) H-400x200

    H形鋼で A=高さ=400mm、B=幅=200mm、t1=ウェブ厚=8mm、t2=フランジ厚=13mm、r=ウェブフィレット部の半径=13mm

だとわかります。材種や強度に関する呼称は、断面寸法とは無関係です。(木材なら すぎ 無等級、鋼材なら SS400)

 

板は 厚さが呼称となり、寸法は 幅と長さを指定します。円は 直径にφ(ふぁい)を付けます。業界のひとなら自然にやります。


木材の断面寸法を呼称で使い分けるルールを考えます。
    平角(ひらかく)    150x300
    正角(しょうかく)  150
    円(まる)         -150
    ただし
    正角は 正方形断面のこと

こうしておくと

のように処理できます。

 

鋼材は JIS規格が示されているのでそれを使います。
    H形鋼          H-400x200
    角形鋼管        B-300x16
    鋼管            P-300x16

これを利用すると

のように処理できます。


座標と呼称は断面性能の計算以外にも次のようなツールがあれば便利です。
(1) 呼称で断面図を描く
(2) H-400x200のあとがわかる
(3) 座標から呼称を推定する


[ 断面図 ]
断面図も呼称で描けそうです。ただし、鋼材には円弧も含まれるのでそれを座標で使うときのルールが必要です。JW_CAD 外部変形には ルールがあるので紹介します。

    円は [x, y, r]
    円弧は [x, y, r, p1, p2, w, d]
    ただし
    x  は中心点の x座標
    y  は中心点の y座標
    r  は半径
    p1 は始角°
    p2 は終角°
    w  は x軸方向の径と y軸方向の径の比(JW_CAD では扁平率と呼んでいる)
    d  は x軸との傾き°
で つぎの図形は

 座標 = [[x1, y1], [x2, y2], [x3, y3, r, p1, p2, w, d], [x4, y4], [x1, y1], "#"]
となります。末尾の "#" は終わりの目印です。角パイプのように図形が複数となるときに利用できます。

 

irb

puts 座標=[[1,2],[3,4]]
1
2
3
4
となるので、座標と認識するのは難しいかもしれませんが、例えば
plot 座標=[[1,2],[3,4]]
1 2
3 4
と出力できればデータは座標だと容易に認識できます。さらに座標は円弧データも扱って構わないことにすれば
plot 座標

plot 呼称
で断面図のデータを返すことができます。

 

[ 辞書 ]
鋼材で H-400x200 のあとを忘れることはよくあります。
dic "H-400x200"

"H-400x200x8x13x13"
を返すようにしておいても便利です。


[ 座標から呼称 ]
JIS規格の鋼材であれば座標から呼称を返す仕掛けも使えるかもしれません。
座標 = jis "H-400x200"

jis_name 座標

"H-400.0x200.0x8.0x13.0x13.0"
呼称を返します。当たり前です。

座標 を 変数につかおうとしたら落ちたので (Windows 11)   pt にしています。



座標が遺伝子なら呼称は生物(いきもの)の名前でしょうか。

 


次回は 円弧の補正 です。