本稿は
実用梁理論(technical theory of beam, Euler-Bernoulli beam theory)とティモシェンコ梁理論(Timoshenko beam theory)をシームレスに解く実用式を紹介しています。
理論の詳細は
「SOLID MECHANICS: A VARIATIONAL APPROACH 1973, 材料力学と変分法 1977」 C.L.ディム/I.H.シャームス 共著 /砂川恵 監訳 より 4.5 TIMOSHENKO 梁の理論 を参考にしました。
参考資料から 弾性曲線式は 断面一定として
EI * w'''' = q (4.10、4.3 実用梁理論の撓み方程式)
EI * w'''' = q - EI / (k * GA) * q'' (4.44)
で 本稿で使用している記号との関係
EI * w''' = V''''(x)
q = p(x)
k = 1 / κ
から 本稿の弾性曲線式
V''''(x) = p(x), x | 0 => L (technical theory of beam, Euler–Bernoulli beam theory)
V''''(x) = p(x) - κ * EI / GA * p''(x), x | 0 => L (Timoshenko beam theory)
が与えられます。
ティモシェンコ梁理論では せん断変形の項 κ * EI / GA * p''(x) が追加されます。たわみでこの影響を考えると
Vg(x) = ∫∫∫∫ κ * EI / GA * p''(x) dx dx dx dx, x | 0 => L
= ∫∫∫ κ * EI / GA * p'(x) dx dx dx, x | 0 => L
= ∫∫ κ * EI / GA * p(x) dx dx, x | 0 => L
= ∫ κ * EI / GA * Q(x) dx, x | 0 => L
から
Vg'(x) = G(x) = κ * EI / GA * Q(x)
より、たわみのせん断変形の影響はせん断角で示されることがわかります。
実用梁とティモシェンコ梁の実用式は
V''''(x) = p(x) = -w (1)
V''' (x) = Q(x) = C1 + ∫ p(x) dx (2)
V'' (x) = M(x) = C2 + ∫ Q(x) dx (3)
r(x) = -M(x) (4)
G(x) = κ * EI / GA * Q(x) (4-1)
V' (x) = T(x) = C3 + ∫ r(x) dx (5)
V (x) = V(x) = C4 + ∫ T(x) + G(x) dx (6)
ただし
κ せん断変形の形状係数
EI 曲げ剛性(一定)
GA せん断剛性(一定)
x 位置
L スパン長
p(x) 分布荷重
w 等分布荷重
Q(x) せん断力
M(x) 曲げモーメント
r(x) 曲率(δ''=φ=r(x)/EI)
G(x) せん断角(γ=G(x)/EI、鉛直方向のせん断歪は全断面で一定とし、材軸方向は0とする)
T(x) たわみ角(θ=T(x)/EI)
V(x) たわみ(δ=V(x)/EI)
C1 積分定数(Q(x=0))
C2 積分定数(M(x=0))
C3 積分定数(T(x=0))
C4 積分定数(V(x=0))
となります。G(x) = 0 とすれば実用梁として扱えます。
材軸の回転角 δ' は 以下のような使い分けとなります。
[たわみを計算するとき]
δ' = θ + γ = (T(x) + G(x)) / EI
[たわみ角を計算するとき]
δ' = θ + 0 = T(x) / EI
ただし
θ はたわみ角で曲げモーメントによる成分
γ はせん断角でせん断力による成分
EI は曲げ剛性で一定とする
実用式は 数式処理ソフト maxima で数式を書いて、境界条件を与えれば解けます。数値を代入すれば変位図や応力図を表示できます。
実用梁理論で得た数式にせん断変形の影響を加えるなら __g__ = κ * EI / GA / L^2 でティモシェンコ数と呼んでいる定数を考えると便利です。
[等分布荷重の例] __g__ = 0 でせん断変形は考慮しない
p(x) = -w
単純支持
Q(x) = -w*(2*x-L)/2
M(x) = -w*x*(x-L)/2
EI*T(x) = w*(2*x-L)*(2*x^2-2*L*x-L^2)/24
EI*V(x) = w*x*(x-L)*(x^2-L*x-12*L^2*__g__-L^2)/24
1端自由・他端固定
Q(x) = -w*x
M(x) = -w*x^2/2
EI*T(x) = w*(x-L)*(x^2+L*x+L^2)/6
EI*V(x) = w*(x-L)*(x^3+L*x^2-12*L^2*__g__*x+L^2*x-12*L^3*__g__-3*L^3)/24
両端固定
Q(x) = -w*(2*x-L)/2
M(x) = -w*(6*x^2-6*L*x+L^2)/12
EI*T(x) = w*x*(x-L)*(2*x-L)/12
EI*V(x) = w*x*(x-L)*(x^2-L*x-12*L^2*__g__)/24
1端ピン・他端固定
Q(x) = -w*(24*__g__*x+8*x-12*L*__g__-3*L)/(8*(3*__g__+1))
M(x) = -w*x*(12*__g__*x+4*x-12*L*__g__-3*L)/(8*(3*__g__+1))
EI*T(x) = w*(x-L)*(24*__g__*x^2+8*x^2-12*L*__g__*x-L*x-12*L^2*__g__-L^2)/(48*(3*__g__+1))
EI*V(x) = w*x*(x-L)*(2*(3*__g__+1)*x^2-(6*__g__+1)*L*x-(72*__g__^2+30*__g__+1)*L^2)/(48*(3*__g__+1))
実用梁とティモシェンコ梁は maxima のような数式処理ソフトを利用すれば、同様に機械的に解けます。ただ、数式処理ソフトはプログラムする必要があるので、実際に利用しようとすると、それが障害になります。近い将来AIがそうした障害も解消してくれることはたやすく想像できます。
技術者が低くみられる時代もそんなに長続きするはずもないので、今、目の前のことをしっかりとやってゆくだけです。健康第一でお過ごしください。