はりの実用式は
V''''(x) = p(x) = -w (1)
V''' (x) = Q(x) = C1 + ∫ p(x) dx (2)
V'' (x) = M(x) = C2 + ∫ Q(x) dx (3)
r(x) = -M(x) (4)
V' (x) = T(x) = C3 + ∫ r(x) dx (5)
V (x) = V(x) = C4 + ∫ T(x) dx + κ * EI / GA * ∫ Q(x) dx (6)
ただし
κ せん断変形の形状係数
EI 曲げ剛性(一定)
GA せん断剛性(一定)
x 位置
L スパン長
p(x) 分布荷重
w 等分布荷重
Q(x) せん断力
M(x) 曲げモーメント
r(x) 曲率(δ''=φ=r(x)/EI)
T(x) たわみ角(δ'=θ=T(x)/EI)
V(x) たわみ(δ=V(x)/EI)
C1 積分定数(Q(x=0))
C2 積分定数(M(x=0))
C3 積分定数(T(x=0))
C4 積分定数(V(x=0))
でした。
数式処理ソフト maxima で解くと
p: -w; /* (M1) */
Q: C1 + integrate(p, x); /* (M2) */
M: C2 + integrate(Q, x); /* (M3) */
r: -M; /* (M4) */
T: C3 + integrate(r, x); /* (M5) */
V: C4 + integrate(T, x) + κ * EI / GA * integrate(Q, x); /* (M6) */
単純支持なら
s: solve([ev(M,x=0)=0,ev(V,x=0)=0,ev(M,x=L)=0,ev(V,x=L)=0], [C1, C2, C3, C4]);/*(M7)*/
[Q, M, T, V]: subst(s, [Q, M, T/EI, V/EI]); /* (M8) */
となりました。
__g__ = κ * EI / GA / L^2
とし、これを ティモシェンコ数と呼び __g__ = 0 のときベルヌーイ・オイラーのはりとなることもわかりました。
今回は maxima で図を描きます。
単純支持で、スパン長 5.0m のすぎの集成材 E65 に等分布荷重 -10.0 kN/m を与えたときは
となります。断面は平角 150x300 です。
maxima で
p: -w$ /* (M1) */
Q: C1 + integrate(p, x)$ /* (M2) */
M: C2 + integrate(Q, x)$ /* (M3) */
r: -M$ /* (M4) */
T: C3 + integrate(r, x)$ /* (M5) */
V: C4 + integrate(T, x) + κ * EI / GA * integrate(Q, x)$/*(M6)*/
s: solve([ev(M,x=0)=0,ev(V,x=0)=0,ev(M,x=L)=0,ev(V,x=L)=0], [C1, C2, C3, C4])$/*(M7)*/
[Q, M, T, V]: subst(s, [Q, M, T/EI, V/EI])$ /* (M8) */
[L, w, B, D, e, g, κ]: [5, -10, 0.15, 0.3, 6.5, 6.5/15, 1.2]$ /* (M9) */
[EI, GA]: [e*B*D^3/12, g*B*D] * 10^6$ /* (M10) */
plot2d([Q, M, T*1000, V*1000], [x, 0, L], [legend, "Q", "M", "T", "V"])$ /* (M11) */
としています。
ふと、材料力学の本場では?と思いつき調べてみると
ティモシェンコの近似理論によるはりのたわみについて、以下のページに詳しいことがわかりました。
Timoshenko–Ehrenfest beam theory
https://en.wikipedia.org/wiki/Timoshenko%E2%80%93Ehrenfest_beam_theory
はりの実用式は以下のやり方についても検討しています。
V''''(x) = p(x) = -w (1)
V''' (x) = Q(x) = C1 + ∫ p(x) dx (2)
V'' (x) = M(x) = C2 + ∫ Q(x) dx (3)
r(x) = -(M(x) + κ * EI / GA * p(x)) (4')
V' (x) = T(x) = C3 + ∫ r(x) dx + κ * EI / GA * Q(x) (5')
V (x) = V(x) = C4 + ∫ T(x) dx + κ * EI / GA * ∫ Q(x) dx (6)
ただし
r(x) 曲率(δ''=φ+γ'=r(x)/EI)、φ=θ'は曲げ曲率、γ'はせん断曲率
T(x) たわみ角(δ'=θ+γ=T(x)/EI)、θは曲げ回転角、γはせん断歪(せん断回転角)
V(x) たわみ(δ=V(x)/EI)
結果は同じになるため (4')、(5')式はベルヌーイ・オイラーのはりと同じで構わないことにしました。それでも、こっちの方が格式もあるし、それっぽいのでこれが実用式でも問題はありません。
それでも、ベルヌーイ・オイラーのはりの弾性曲線方程式にせん断たわみの項を追加しただけの実用式はクールです。maxima がなければ見つけることはできなかったでしょう。maxima が AI なのか 人工知能なのかは知りませんが強力です。当方が構造計算を始めたころ、乾電池で動く携帯用の電卓が登場していました。それ以前はそろばんと計算尺だったので(当方は学生時代まで)いまの仕事にはついていなかったと思います。そろばんができないからです。関数電卓が人生を変えたのかもしれません。当方にとって maxima はその関数電卓を超えるものであるような気がします。
格式で思い出したのですが、日本では 2016年に CLTパネル構法で5階建て程度の建物が設計できるようにマニュアルが発売されました。CLTパネル構法は臥梁を床パネルや垂れ壁・腰壁で流用するため、構造的には力の流れがわかりにくいので、そのマニュアルの作成に関わった極めて一部のひとにしか採用されませんでした。格式には閉塞感や縄張りのイメージもあります。
CLTパネル構法でも臥梁を回して壁式ラーメンにしてしまえば壁式RCと同様の手法で設計できるのですが、そうした研究は進んでいません。CLTの普及のためには、より明快な構造計画ができる工法の提案が必要だと言えます。
現実は、プロレスや時代劇とは違いますが。アントニオ猪木や桃太郎侍の登場を構造設計者にも期待しています。
次回は maxima を ruby から起動するやり方を紹介します。